GamevsPuzzle

パズル問題自動生成時代 -- 概論

ゲームとパズルの違い

誤解

ゲームとパズルを同じものと考える人は非常に多い。似たような遊びに見えるかも知れないが、遊んでいる人間の心理は非常に異なる。また、ビジネス的に見ても、まったく異なる流行り方をする。これらの、最も基本的な点の誤解を解いておこうと思う。

ゲーム

ゲームは、複数人で遊び、対戦し勝負を争うのが普通である。人数は、2名以上数名程度で行なう。ゲームをどう規定するかは人様々だが、ここではこの程度にする。

囲碁や将棋のように、全ての情報が全プレイヤーに見えるゲームもあるし、トランプの各種ゲームのように、相手には自分の情報を見せないゲームもある。

また、偶然が入り込むようにサイコロ等を使うゲームもある。トランプや麻雀では、札や牌をかきまぜることで偶然を入れている。

偶然性が高いゲームは、偶然弱い者が勝つことがある。弱くても勝てるのは、初心者にとっての参入障壁が低い。逆に、囲碁や将棋では、偶然などなく、強い者はあくまで強く、初心者が上級者に勝つなどまったく考えられない。

バックギャモンというゲームがある。2名で勝負を争うのだが、サイコロに目に従ってコマを移動させる。このゲームでは、全ての情報は両プレーヤーに見える。出た目に従ってコマを移動させるのだが、どのように移動させるかの選択の余地があり、その上手下手が勝負に大きく影響する。

パズル

パズルは、「一人遊び」とも言われる。相手は必要ない。そういう意味では、大変孤独な遊びと言えるかも知れない。

もちろん、一人遊びだから一人で遊ばないといけない訳ではない。同じ問題を、複数人で考えても構わない。

しかし、あまりパズルを複数人で解いているのは見たことがない。それどころか、パズルが解けなくて悩んでいる者を見ても、横から勝手に手を出さないのが礼儀である。というか、下手に手を出すと激怒されたりするので要注意だ。

電車の中で遊んでいるのをよく見かけるが、たとえ間違っていても、教えたりはしてはいけない。「下手だね」と思って、初心者はどう解くのかを勉強するしかない。

パズルは相手に勝つのが目的ではなく、問題を独力で解いてしまうのが目的だ。つまり、自分の実力を問題に対して試している訳だ。対人間ではなく、対問題の性格が強い。もちろん、その問題は人間が作ったもの、あるいは人間が作ったプログラムが自動生成したものだったりするのだが。

パズルのゲーム化

パズルは、本来は一人で延々と暇潰しをするために存在するのだが、ゲーム的要素を入れることは可能であり、実際に良く行なわれる。

一番簡単なのは、解答時間を争うことだ。同じ問題に対して、できるだけ早く解く。簡単な問題だと、書き込みの早さ、パソコン上で競争する場合にはすばやい操作が勝負になってしまう。

いわゆる早解きでは、難問を用意することが多い。なかなか解けないような問題を一斉に解き始め、誰が最初に解き終えるかを競う。あるいは、何問か用意しておいて、それらを全部解き終える時間を競うこともある。

こういうのも楽しみ方の1つであるが、あまりにも実力主義になって、パズル本来の時間潰しの意味がなくなってしまう。相手がいるわけでもないので、ゆったりと楽しみながら解くことができなくて、どこが遊びだ、という考えもパズルには強い。

同じ問題を、複数人で同時に解いて、誰が一番多くの部分を解いたかを競うこともできる。たとえばクロスワードの場合、プレイヤーそれぞれが別の色で解き進むことを考えて欲しい。こういう場合には、サイズの大きな問題であることが望ましい。正しく解くとプラスのポイントが入り、間違えるとマイナスされる。

このやり方は、非常に多くのパズルに適用できるのだが、1つ大きな問題がある。間違いを起こす者がいると、パズルが解けなくなってしまうことだ。だから、相手の間違いを指摘すると大きなボーナスポイントを得られるなども必要だ。

また、各プレーヤーは、自分の番のとき、1手(1コマ)しか手を進められない、つまり交互に一手だけ解き進めることにし、何もできなくなくなった方が負け、というのもあろう。

パズルをコンピュータを利用してゲーム化する場合には、もっともっと色々な方法が考えられよう。いずれにしろ、面白いかどうかが重要である。

寿命

ゲームとパズルが圧倒的に違うのは、寿命である。生命曲線(?)は、次図のようになっている。

短期決戦型のゲーム

ゲームは、開発が非常に大変になっている。最近のゲームは、キャラクタを用い、音楽も用意することが多い。ディレクター、デザイナー、プロデューサ、シナリオライター、ミュージシャン、ボイス、ソング、プログラマ、テスター、等々とても沢山の人が参加している。ゲームの説明書の最後にスタッフクレジットというのがあり、そういうのを見ると、20〜30名くらい並んでいることは普通である。

要するに、ゲームは大変な人手を要する開発になっている。開発期間も当然長いことが多い。1年以上かけて開発するのが当たり前だ。開発工数は、ざっと数十〜数百人月が普通なのだろうか。

そして、発売に先だって、大々的に広告が打たれる。ゲームショーで多数のコンパニオンを使ってのデモ、さらにTVなどでもCMが流れる。

そして、発売になるのだが、売れる期間は3ヵ月と昔から言われている。企画から数えれば、2〜3年かけて作って、2〜3ヵ月で一気に売る。その後も売れることは売れるのだが、圧倒的に売れる量は減る。

膨大な予算をかけて開発し、短期勝負を行なうのがゲームの一般的な姿だ。もちろん、大量に売れると生産が追いつかないこともあるが、逆に売れないと在庫の山になったりする。ゲームは、ハイリスク・ハイリターンの典型的ビジネスだ。

じっくり型のパズル

それに比べて、パズルはじっくりというか、のんびりした展開をする。今は、パズルブームなので、昔よりも派手になっているが、それでも大人しい。

1つのパズルを開発するのに、キャラクタや音楽などをあまり取り入れなければ、せいぜい数名で、数ヵ月で開発し終えるのが普通だろう。数人〜十数人月程度であろうか。ゲームに比べると、1桁以上も工数が少ない。

売り方にしても、派手な広告をあまりしない。一時的に知名度を上げて、購買意欲をそそるというのは、パズルの性格からして難しい。周囲でだれかがパズルにはまっているのを見て、何だが面白そうに遊んでいるので自分もやってみようというのが一般的だ。広告で広まるよりも、人から人へじわじわと伝わっていくタイプの遊びだ。

ゲームは、一気に解き終えようとする人が多いが、パズルの場合には、それは少ない。パズルを解く能力を向上させるには、かなり時間がかかる。毎日1時間くらいでは、上級者になるには早くても何ヵ月もかかるものだ。ときどき遊んでいるくらいでは、上達には年単位の期間が必要だ。

これらの理由で、パズルは、じわじわと流行していく傾向がある。ゲームのブームは数ヵ月だが、パズルのブームは数年続くと言われている。

パズルは、ローリスク・スローリターンのビジネスだ。もちろん、ゲームもパズルも、それぞれ非常に特殊な専門的な能力が必要で、だれでもが簡単に作れるものではない。

自作

ゲームの自作

ゲームは、昔はアマチュアプログラマが自作して、パソコン出版社等に投稿したりして、それが販売されることがあった。まさに、アマチュアの自作時代であり、私はそのころ某出版社グループにて、送られてきたプログラムをチェックしたり、出版や商品化する作業をしていた。

パソコンの能力が低く、あまり複雑な遊びをつくることが出来ないころには、個人の自作とか、小さなソフトハウスが作ったゲームがかなりあった。そういうソフトハウスの中には、ゲーム専門の会社になったところもある。

パソコン、あるいはゲーム専用機の性能が上昇し、大量のデータを記憶できるようになり、画像、音声、音楽などが入れたいだけ入れられるようになると、もう個人の片手間で作れるような世界でなくなった。

ゲームの場合、非常に多数の要素の組み合わせで評価される。たかが遊びというけれど、たいていのビジネスソフトよりも時間をかけて作っている。テレビ番組やマンガ雑誌などとも連携し、とても大規模な開発になってしまった。そして、個人のアイデアを、個人が実現していくということは不可能になってきた。企業の組織力がないと作れなくなった。

パズルの自作

パズルは、同じ遊びといっても、充分自作できる世界だ。ゲームのようなデザインをしたら、デザインの方に目が行ってしまい、パズルを解くことに集中できなくなって、叱られる。音もやたらに鳴らされると、これまた気が散って遊べない。

パズルは、非常にシンプルなルールでできており、ユーザインターフェイスも単純になっている。動きにスムーズさは要求されるが、全体として「シンプル イズ ベスト」の世界だ。

こういう条件だから、一人で作れるくらいプログラムは短くてすむ。遊ぶためのプログラムであるプレイヤーは、プログラムの勉強として丁度良い程度の難易度だ。

もちろん、実際には問題がなければ遊べないので、問題の正当性の検証、問題作成支援、さらには問題自動生成のプログラムが必要になってくる。これらは、プレイヤーと違い、非常に高度な技術を必要とする場合もあり、作れる人は限られてくる。それでも、ゲームに比較すると、プログラムの長さははるかに短く、個人で作成可能である。もちろん、パズルやプログラミングの高い能力があればの話だが。

ゲームは自作はまず不可能な世界だが、パズルはまだまだ自作が十分に楽しめる世界だ。また、能力に応じて、自作の範囲も色々考えられる、とても魅力的な DIY (Do It Yourself) の世界だ。

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